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コットンソフトが終末論を題材に切ない青春を描いた「終わる世界とバースディ」がついにDL版リリース。強烈な個性と可愛らしさを備えた美少女たちと織りなす、終わりゆく夏のひととき……。世界は本当に終わってしまうのか? そして世界が終わるということは、何を意味するのか?
その昔、18禁ゲームで「泣きゲー」というジャンルが一世を風靡した時期があった。文字通り「泣けるゲーム」のことで、プレイヤーの情動を掻き立てる感動系のシナリオがその特徴だ。
もちろん、そのままブームで終わることなく人気ジャンルとして確立されていることはご存じの通りで、今も感動を求めて多くのユーザーが「泣きゲー」をプレイしている。
しかし、感動というものは極めて主観的なものであり、種類もさまざま。誰もが幸せになれる大団円で涙する人がいる一方で、救いのない鬱展開に快感を覚える人もいる。もし、両者がプレイするゲームを取り違えでもしたら、どんな悲劇が起こるか分かったものではない。私も昔、「たまには白濁してない汁をいっぱい出してスッキリしたいな」と気まぐれを起こし、友人オススメの泣きゲーをプレイしたことがあるだ、あまりのバッドエンドに一ヶ月ほど鬱になり、違う意味で涙したものだ……。
今回ご紹介する「終わる世界とバースディ」は、そんな泣きゲーに私が勝手にカテゴライズしたタイトル。少なくとも私は泣いた。感動した。レビューを書き終わったら、もう一回プレイするくらいに。
もし、感動できるゲームをお探しのユーザーがいたら、ぜひこのレビューを参考にしてほしいと思う。お涙ちょうだいのご都合主義やインパクトのみを追求した鬱展開とは一線を画す、切なくも爽やかな上質の感動が味わえることを保証するぞ。
ただし! 本作はその性質上、物語やキャラクターの根幹に踏み込むと思いきりネタバレになってしまうため、あまり詳しく書くことはできない。したがって、やや抽象的な言い回しが多くなってしまうが、ご容赦いただきたい。
死んだ親友の妹・入莉は、兄を失ったショックから主人公のことを兄と思い込んでおり、仮初めの兄妹として一緒に生活している。視覚と精神にハンデを負っているが、根は明るく健気な女の子だ。
兄・陶也(とうや)が事故死したショックで心を病んだ幼なじみ・千ヶ崎 入莉(ちがさき いり)と二人で暮らす主人公・冬谷(トウヤ)。トウヤは入莉から兄だと誤認されていたが、トウヤは彼女のために死んだ陶也のふりをしながら生活していた。
そんなある日、謎の人物・カサンドラがネットに書き込んだ「2012年9月29日に世界が終わる」という予言が街中でまことしやかに囁かれ始め、トウヤと入莉は、ひょんなことから「9.29対策協議会」という非公式サークルに参加して予言の真相を調査することになり……。
成り行きで「9.29対策協議会」として活動することになった主人公たち。カサンドラの予言を何とか回避しようとするが……。
予言によって起こる出来事はどんどんエスカレートしていき、天災をも的中させてしまう。主人公たちになす術はないのか?
かくしてプレイヤーは、ヒロインのルートごとに、さまざまな世界の終焉を見ることになる。一見するとオムニバス形式のシナリオに思えるくらい一貫性がないが、もちろんそこにはきちんとした意味がある。それは、あるヒロインのルートに入ってから明らかに……。
「実は、主人公たちが暮らしている世界は○○○○だったんだよ!」
「な、なんだってーーー!?」
ある事実が明らかになったとき、支離滅裂とさえ思えた物語の輪郭が一気に浮かび上がり、鮮明な驚きとなってプレイヤーを襲います。まさに、世界のありようを根底から覆す衝撃だ。
ジャンルとしてはいわゆる「セカイ系」と呼べるもので、正直なところ真相自体に目新しさはあまりなく、次々に明らかになるネタにも既視感があることは否めない。しかし、そのネタ選びと料理の仕方が非常に巧みで、同じネタを使ったほかの作品とは一味違う深みがある。伏線の回収の仕方も秀逸で、それまでの出来事がいちいち腑に落ちる感じはまさに快感。キャラクターやセリフなど物事のすべてに意味があり、シナリオの完成度の高さを物語っている。
勘の良い人は、上記の伏字に入る言葉が分かってしまうかもしれないが、それを踏まえてプレイしても本作の魅力はまったく損なわれないのでご安心を。
バッドエンドにつながる重要な選択肢の場合、「WARNING!」の文字で警告してくれる親切設計。なお、バッドエンドの中には凌辱的なものや残酷なものもあるので要注意。
さて、衝撃の事実と共に物語は急展開を迎えるが、むしろここからが本番
メインヒロインの入莉を色々な意味で救おうとするトウヤの奮闘を始め、それぞれにトラウマを抱えるヒロインたちとの重厚な人間ドラマ、そして世界の終末の本当の意味など、苦悩と葛藤が渦巻くシリアスなストーリー展開が待っている。序盤のミスリードも手伝って、プレイヤーをいい意味で裏切ってくれること請け合い。私も先が気になって中断するタイミングが見つからず、時間を忘れて一気に最後までプレイしてしまった。
この手の作品は、風呂敷を広げるあまり冗長になってしまう場合が多々ありますが、本作は非常に手堅くまとまっていて、適度なボリュームのシナリオでテンポよく物語を楽しむことができる。驚きと感動の物語をぜひ自分の目で確かめてほしい。
なお、本作の結末は陰鬱としたバッドエンドではないが、完全なハッピーエンドというわけでもない。いわば、ほろ苦い余韻を味わうビターエンドと言うべき結末となっているので、大団円を期待しているユーザーは要注意。
世界が終末を迎えることは、最愛の人・入莉を救うことと同義だった!? 果たして主人公は彼女を救うことができるのか?
最後に、本作はゲームの冒頭で自分の「誕生日」を入力するのですが、これはぜひ自分の誕生日を入力してほしい。あるギミックのための非常に重要な要素となっているので、適当に入力すると絶対に後悔するぞ。お忘れなく!
終わる世界とバースディ | |
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ブランド | コットンソフト |
発売日 | 2014年7月18日 |
価格(税込) | 6,800円 |
(C) コットンソフト |
キーワード: 純愛
2014年11月19日 17時22分