これはひどい。少女に豚の臓器を移植し本物の雌豚に調教

サナトリウムの雌豚戦争が生んだ狂気が弱者を虐げるという例は多い。「サナトリウムの雌豚」で描かれる狂気はその中でも最狂の部類に入る。終戦間近の日本で皇国の兵士を再び悲惨な戦場に送り出しお国のために殺すために行われた「異種族間臓器移植実験」。被験体となった少女の生き地獄を描く。

サナトリウムの雌豚伊豆にある修道会系サナトリウムでいくばくもないはずの余命を保っていた少女は「傷痍軍人ノ前線復帰ノ為ノ予備研究」のためにその身を捧げることになる。少女は「被験体:零」と呼ばれる。先天的に免疫力がない彼女はさまざまな感染症に冒され死ぬ運命にあった。臓器移植は拒否反応を抑えるために免疫を抑制して行われるため、まさに臓器を移植する対象として零は最高の被験体とえる。サナトリウムの雌豚ただし、移植される臓器は人間のものではなく、豚のものなのだから人間としての尊厳を完全に無視した狂った実験にほかならない。ヒトと異種動物間の臓器移植を成功させ、戦争で傷ついた軍人を再び戦場に送り出すための実験……先天的な免疫不全という体質のおかげで零が唯一の成功例となる。サナトリウムの雌豚豚の臓器を移植されたことで少女は生き延びた。時は終戦まで数カ月。多くの軍人が敗戦の予感を覚えている時代である。敗戦への恐怖と焦りが軍人たちをさらなる狂気へと駆り立てる。雌豚となることで生きながらえた少女は、軍人たちに雌豚として扱われ、もう一度人間としての尊厳を踏みにじられることになる。

■戦争の生んだ狂気の物語に救いはないし、救いがあってはいけない
軍人や軍の科学者たちの行き場のない不安は、人間ではなくなった少女の体を虐げられることによって緩和される。少女の体は既に人ではない。人であっても弱者には容赦ない歪んだ男たちの欲望の捌け口となり、当たり前のように犯され続けることになる。そして実験という名を借りた医療器具を使った責めが繰り返されていく。「また、私は豚に一歩近づいてしまうのだろうか?」と少女は自問する。「殺して。殺して。殺して」と雌豚となり生きながらえたわが身を呪ったところで、唯一の実験の成果である零は死ぬことも許されない。この狂った実験を主導し、少女を生き地獄へ堕として科学者の名を尾崎という。既に人間としては生きていない彼女を生かし続けることが使命になっている、最も罪深き男である。

戦争が生んだ狂気ではなく、もっと純粋な狂気に支配されている登場人物がもう1人。従軍看護で尾崎の助手、森田華音だ。彼女の狂気は尾崎への愛から生まれた。「お前の失敗は全て尾崎様の失敗になるんだ! 生きて、そして尾崎様の研究が素晴らしいものであるか、その身を以て示せ!」。華音の狂気は尾崎への盲信的な愛から生まれる。尾崎の関心が披験体である零にだけ注がれていることで、嫉妬に似た感情として表れ、零へのサディスティックな振舞いによって昇華される。彼女もまた、不幸な女性である。零の人間時の臓器は華音に移植されており、披験体の一人ももあるのだ。「この精液まみれの雌豚を、自分の手で苛みたい」。彼女の狂気はこの物語の見どころの1つである。

零は美しい外見を保ったまま、自分が人なのか、豚なのか分からなくなっていく。臓器移植の影響で知能の低下も見られる。度重なる実験と、人として扱われない凌辱の末に、零は……、そして、華音はどのような結末を迎えるのか? 戦争の生んだ退廃的な空気と狂気が描き出す物語に救いはないし、救いがあってはいけない。

サナトリウムの雌豚
ブランド黒雛
発売日2010年11月5日
価格2980円
(c)黒雛

キーワード: 調教

2010年11月05日 14時53分