家はないけど明るく元気なロック少女の自由で気ままな物語

入学式。神社の跡取り息子の神木真理は入学式の訓示の長さに少々うんざりしながらもこれから始まる新しい生活に胸膨らませていた。ところが、入学早々出会ったのはホームレスの少女にして1つ上の先輩……「ボクラはピアチェーレ」という普通のようでいて普通でない物語が始まる。

主人公である真理をうらやましすぎる学園生活に巻き込むホームレス少女とは、夜の神社の境内で出会う。賽銭泥棒と間違え、捕まえてみると、かわいい少女。明日葉さくらと名乗った少女の身の上話によれば、父親は多額の借金を抱えて、本日をもって一家離散。住むところがなくなったので、雨露をしのごうとやってきたらしい。随分、悲惨な話なのであるが、 さくらが話すとそれほどの悲劇に感じないのは、どうやら世間様と少々ズレた感性の持ち主だからか。「駆け込み寺」から連想して「神社」に駆け込み。無料で泊まるのは悪いからとお賽銭をしようとして捕まった。いい娘といえばいい娘なのだが、明るく前向きな性格というには生やさしいほどに人生暴走気味のロックな少女なのである。「ウチって神社じゃないですか。神頼みに来た人には、やっぱり応えてあげないと、ウチの神様の面子にも関わっちゃうし……」というススメに従い、神社の一室を借りてそこから通学することになる。思春期真っ只中の息子と初対面の娘を一つ屋根の下に住むことを許しちゃうというのであるから、神主さん(主人公の父)もまたロックな生き方のお人であるらしい。

■奔放でロックな先輩と純粋で初心な幼馴染に挟まれる男冥利な展開
真理とさくらは初対面ではない。退屈な入学式の訓示のあとに行われたサークル案内で、真理はさくらを見ている。壇上で軽音楽部として演奏した姿を見ている。といっても、ギター&ボーカルのさくらとベースの鈴木絢香しかいない随分とさびしいライブの上に「出番の前に急に今月の血祭りがきちゃいまして、あはは」という実に下品なMCから始まるライブアクトだったわけだが……。年頃の女の子にとって禁忌ともいえる生理ネタをぶちかし、それを「演出の一環なの、インパクトを出すためのものなの」と言い放つ。この奔放さに振り回される真理の姿は少し気の毒にすら見えてくる。「……あたしみたいな女の子、嫌い?」と上目遣いで擦り寄ってきたかと思えば「それはさておき、神木君秘蔵のアーカイブスはどこにあるのかな? Hな本とかDVDとかそういうのだよ」と言わずもがななことを言う。あけすけというレベルを超え、無邪気ではかたずけられない言動の数々に主人公はドキドキしながら、この同棲の危うさに胸と股間を膨らませる。


ロックな神主もさすがに一つ屋根の下、思春期の男女がいるという状況に親として危険を感じた、あるいはもっとすさまじい修羅場を演出してやろうというイタズラ心を起こしたせいで、登場するのが高野琴子という幼馴染の女の子。主人公を詰問中にバスタオル1枚のさくらとご対面し、「もー、最っ低! おじさんがいないところであんたいったい何をやってんのよ!?」と初手から殺気全開なのである。さばけ過ぎているほどにさばけているさくらに対して、琴子は純真で初心すぎるほどに初心。でも、年頃の女の子なので、主人公のことが気になっている風な雰囲気は言葉の端々ににじんでいるのだが、素直になれないのが幼馴染の宿命な上に、琴子は幼児体型コンプレックスという第二次性徴期を迎えた女の子にとってデリケートすぎるほどにデリケートな問題を抱えているのであった。結局、「出会ったばかりの若い男女が一つ屋根の下で一晩過ごすなんて、不純だわ!」と、主人公とさくらを監視するために一つ屋根に収まってしまうのである。琴子は、ピアノの経験もあるので、軽音楽部にも合流することになっていく。演出・さくら、主演・真理で「入ってあげてもいいわよ……」と、琴子を巻きこむシーンは前段のハイライトなので要注目!

■け・い・お・ん部ライブ成功に向けて! 互いの距離が縮まっていく
物語の舞台は、廃部寸前の軽音楽部。さくらいわく「今風に、け・い・お・ん部」が舞台になっていく。さくら以外の唯一の部員、鈴木絢香は、「同棲ってことは、さくらちゃんと四六時中一緒にいられるっていうことじゃない? 食事も、お風呂も、おやすみのときも一緒だなんて……はふぅ、たまらないわぁ……」な女の子。さくら同様、世間様とずれている感がときどき顔をのぞかせる。いつもニコニコおっとりお嬢様でそれほど自己主張が強いようにも見えないのだが、ときどき(特にさくらがらみでは)鋭いことを言い出すし、なんといっても男なら反応しないではいられない巨乳の持ち主である。実際、ドラム担当の男子(主人公の友人)は巨乳目当てでドラマーとして「け・い・お・ん部」に参加することになる。しかもオタクっぽい言動も多く、いわうる腐女子?とも思える発言が多い。その手の話題になると「ギザカッコヨス~」なんてことを言いだしたり、コスプレしたがったり……とにかくそんな一面もある娘だ。


蓮川瑞樹は生徒会長。メガネで真面目で近づきがたいタイプとなると、部員2人でダラダラ活動している「け・い・お・ん部」が少々目ざわりらしく、頻繁に文句を言いに来ることになる。今度の金曜日までに部員を5人以上そろえないと同好会に格下げ、部費ゼロとか、成績が悪い生徒は部活動停止&強制退部だったりとか、進学校という設定なので、何かとうるさい学校なのである。そんなお堅い学校の生徒会長といえば、融通の利かない石頭と相場は決まっている。でも、瑞樹もまた、音楽が好きで、価値観は明らかに違うものの一生懸命に頑張る「け・い・お・ん部」のメンバーのことが嫌いというわけではないのであった(あまり書くとネタバレだと怒られるので想像してね)。


学園祭での初ライブに向けて、お勉強会あり、合宿あり、日々の練習ありで、少しずつ互いの距離を縮めていく「け・い・お・ん部」のメンバーたち。主人公は、4人のヒロインの誰を選び、誰に選ばれるのか。ピアチェーレは「自由に」「気ままに」という意味の音楽用語。自由で気ままな物語は、プレイヤー自身が綴っていくことになる。

ボクラはピアチェーレ
ブランドアドリブ
発売日2010年6月25日
価格9240円
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2010年06月18日 13時40分