揺蕩う魂(たゆたうたましい)と触れ合う、オーソドックスだけど完成度の高い恋愛アドベンチャー

封印されていた神様や魔物を復活させてしまうとか、突然現れた美少女に好かれて一緒に暮らしてしまうとか、世界の平和を守るために主人公とヒロインが力を合わせて戦うとかいう話はアダルトゲームでは割りと珍しくもない、ありがちなストーリーだ。
しかし、それらの要素をどのように調理していくかによって、出来上がってくる料理は全く違った味わいを持つことになる。

その点、Lump of Sugarには腕利きのシェフがいるようで、3作目となる「タユタマ -kiss on my deity-」は絶品といっても過言ではないご馳走に仕上がっている。

主人公が巻き込まれる、太転依(たゆたい)という物の怪たちとの日常は、プレイヤーにとって心地よいスピードでテンポよく展開していく。


●謎の遺跡から出てきたのは太転依(たゆたい)と呼ばれる物の怪たち!

主人公の泉戸裕理はバイクや自動車いじりが大好きな八衢神社の一人息子。定まらない将来に漠たる不安を抱きながらも、友人の河合アメリや要三九郎らと共に、創聖学院での学院生活を謳歌している。
そんな彼が最上級生になる春休みに、学院のグラウンド拡張工事の影響で奇妙な遺跡が出土する。実家の神社でしか見たことのない文様が刻まれたその遺跡には[太転依]と読める文字が彫り込まれており、さらに裕理は遺跡一帯で飛び回る小さな物の怪までも発見してしまう。
「学術的には無価値」と判断された遺跡の取り壊しを前に、危機感を覚えた裕理は夜を待ち、アメリや三九郎と共にひそかに学院に忍び込み、御魂移しを行う。
しかしこの儀式によって本当に神様らしきものが現れる。さらに不慮の事故により遺跡が破壊され、神様と共に封じられていた多くの太転依(たゆたい)が放たれてしまう。

▲平和な日常を送っていた裕理たちだが、遺跡から現れた太転依たちによって、その日常は一変してしまう

▲御魂移しの儀式によって現れたのは、人間と太転依の共存を願う神様、綺久羅美(きくらみ)だった

▲人間との共存という目的のために肉体(幼女)を持った綺久羅美だったが、封印されていた他の太転依たちや、三強と呼ばれる強力な太転依までもが世に放たれてしまう


人間と共存するために肉体を得た綺久羅美は転生したようなもので、裕理によって「ましろ」という新たな名前を与えられる。
彼女は八衢神社代々の血を引く裕理と契りを交わそうと熱烈なアタックをかけてくるため、嫉妬した幼馴染のアメリと激しく言い争うことも…。

▲幼女の姿をしたましろの「お嫁さんになる」発言に「大きくなったらね」と返答した裕理だったが、太転依のましろは神通力で大きくなってしまう。あれ? こんなつもりじゃなかったのに…

▲三強を捕らえるために霊力を高める特訓をしたり、鉄の馬にましろを乗せてあげたり、アメリとましろの嫉妬の炎に焼かれたり。劇的に変化した裕理の日常が、心地よいテンポで綴られていく


●明るい日常とシリアスな展開が楽しめるシナリオ

本作はオーソドックスな学園モノに、物の怪要素を加えたアダルトアドベンチャーゲームだ。
複雑な選択肢による分岐は少なくシンプルにまとまっており、基本は主人公とヒロインたちの恋愛模様が描かれる。
その中で、太転依として人に接してもうまくいかないましろの苦悩や、人間に害を成そうとする三強との戦いなどが展開されていく。
過去作品からのネタやポップな画面効果なども多用し、全体的に明るく楽しいイメージの作品だが、シリアスな展開を多分に含んだシナリオもしっかり楽しめる。
シーンに合わせてBGMが切り替わるシステムも、場面展開に大きく貢献しているぞ。

▲肉体を得て神通力が弱まったとはいえ、100を超える太転依を従えるましろ。人間ではない彼女だが、中身は一途な女の子なのだ

▲ましろの登場により、腐れ縁で互いに意識することもなかった幼なじみ、アメリとの関係も大きく変化していく

▲妹同然に育ったゆみなとは現在同居していないが、裕理を兄と慕うけなげな(だけど突っ走りやすい)ところがかわいい

▲最初は遺跡を設置・破壊した犯人だという疑いをかけてきた、創聖学院女子学部(フローレス)のミレディ(女子学部総代)、美冬。誤解が解けてからは頼れる協力者に

▲ランプオブシュガーの前2作と比べ、本作のエッチシーンには力を入れて作られているぞ


●LoS作品へのエントリーには最適となる好感触タイトル

Lump of Sugarの前2作、「Nursery Rhyme」「いつか、届く、あの空に。」をプレイした人には、それらに劣らぬ良作に仕上がっていると伝えればいいだろうか。
プレイしたことがなければ、本作はLump of Sugar作品に最初に触れる上で、間違いなくオススメできるタイトルになっていると言える。

ヒロインたちとの恋愛をしっかりと中心に据えた本作は、時間を忘れてプレイしてしまう魅力を持っている。「最近、満足のいく恋愛アドベンチャーに触れてないなぁ」と感じる人はぜひ、体験版からプレイしてみてはどうだろうか?

タユタマ -kiss on my deity- 体験版


タユタマ -kiss on my deity- 初回限定版
ブランドLump of Sugar
ジャンル恋する乙女の神通力ADV
原画萌木原ふみたけ(もえきばらふみたけ)
シナリオ史方千尋(ふみかたちひろ)
ボイス主人公以外フルボイス
ムービーあり
音楽 大川茂伸
OP曲・ED曲・挿入歌・キャラクターソング(8曲)
発売日2008年7月11日
メディアDVD-ROM
対応OSWindows2000/XP/Vista
初回特典ヴォーカルコレクションCD 『タユタマ-Moment of Love-』
『タユタマ-kiss on my deity- Official book』
『タユタマ-kiss on my deity-・特製キャラクターポートレート』
スペシャル『アズ』ぬいぐるみストラップ
予約特典『タユタマ・ドラマCD&ミニデストップコレクションCD』
『タユタマ・キャラクターリバーシブルスティックポスター』
『アメリのオーバーニーソックス』 by萌木原教授監修
※詳しくはオフィシャルをご確認下さい。
価格10,290円
詳細はこちら



キーワード: 純愛

2008年07月18日 18時50分