いやぁ騙された。
騙されたというのは他でもない、今回レビューした
ゆずソフトの恋愛アドベンチャーゲーム「
夏空カナタ」のことだ。
キャラクターのイメージやストーリーの導入部分からオーソドックスな恋愛ADVを想像していたのだが、本作はそんなありきたりなものではない。
3人のメインヒロインそれぞれのルートはかなり特殊なシナリオとなっており、どれも一筋縄ではいかない手ごたえを持っている。
軽い気持ちでプレイすると、いい意味でその落差に驚いてしまうような、かなり力の入ったゲームとなっていたぞ!
●日本だけどなぜか常夏の島『塔弦島』でのひと冬の物語
日本で唯一の常夏の島『塔弦島』は、沖縄と変わらない緯度にありながら一年を通して真夏に近い気温を保つ不思議な島だ。
その理由は海底火山からくる海流の影響だとか色々と言われているが、どれも噂の域を出ず、真実を知る者はいない。
主人公は、島でペンションを経営する叔母のもとに冬休みを利用して訪れた『朝倉壮太』。
ペンションでアルバイトをしながら従妹である『三好由比子・双葉』の姉妹や、幼なじみの『六角五郎』と楽しい日々を過ごしていく。
▲幼なじみの由比子、双葉の姉妹と、同じく幼なじみの五郎とは年に1回、冬の時期だけ会う主人公。冬とはいっても常夏の島なのでみんな薄着だ
▲ミホ叔母さんのペンションでアルバイトをしながら、いつもの面々と楽しい休みを過ごす。今回は新しい出会いもあったようだ
本作は大まかに、3人のメインヒロインのルートに分かれている。
序盤の選択肢でそのルートが決定されるのだが、どのルートを選んでもずっしりと手ごたえのあるストーリーが楽しめるようになっているぞ。
▲上坂 茅羽耶
(こうさか ちはや)
主人公が喫茶店で出会った少女。事故により短期記憶障害となり、記憶を3日間しか保てない。
常に明るく、前向きな性格で一見悩みなどなさそうに見える。いつもにこやかな笑顔で接する。
▲三好 由比子
(みよし ゆいこ)
主人公の従妹にあたるペンションの2人姉妹の姉。見た目は幼いが主人公と同じ歳。
両親に甘やかされて育てられたためか、かなりのわがままで、とにかく自分の意見が全て正しいと思っている。
勝気で負けることが大嫌い。
▲七条 沙々羅
(しちじょう ささら)
神社の一人娘、お祭りの日に主人公と出会う。
おっとりした口調で話す。時々何を考えているのか分からなくなる時がある。
驚くほどの世間知らずで、周りをトラブルに巻き込んだりする。
●茅羽耶の章-互いの思いを伝え合った少女は、次の日全てを忘れ去っていた
アルバイトをしながら楽しい日々を過ごす中、壮太は立ち寄った喫茶店で一人の少女、茅羽耶と出会う。
父親へのプレゼントを決めかねている彼女の相談に乗り、共にプレゼントの手作りケーキを作り上げ、一緒に過ごすうちに互いに淡い恋慕を抱くようになっていく2人。
そして二人は、夕暮れの浜辺で導かれるようにキスを交わす。
その翌日、壮太は茅羽耶に会うために喫茶店を訪れる。
しかし、再会した茅羽耶は壮太を冷たくあしらう。
「そもそも、あなたは誰なんですか?」
まるで、知らない人間を見るような瞳を向ける茅羽耶。
彼女は事故によって短期記憶障害に陥り、記憶を三日しか維持できないのだという…。
出会いも、二人で悩んだことも、キスをしたことも……全て失われてしまった茅羽耶の記憶。
その事情を知った壮太は、彼女の記憶と真正面から立ち向かうことを決意する。
▲喫茶店で仲良くなった少女、茅羽耶。彼女の相談に乗り、共に過ごす中で、次第に2人は仲良くなっていく
▲互いに恋心を抱いた壮太と茅羽耶は、沈む夕日に染まる浜辺で互いの思いを伝え合い、キスをする
▲しかしキスの翌日に会った茅羽耶は、キスどころか壮太の存在すらも完全に記憶から失ってしまっていた…
●由比子の章-恋人になった幼なじみに付きまとう過去の忌まわしい記憶…
みんなでお祭りや花火を楽しむ、いつもと変わらぬ島での暮らし。
だがある日、ふとしたことをきっかけに由比子は壮太に想いを伝え、従妹という関係は思わぬところで崩れ去る。
子供の頃から一緒だった由比子の気持ちに困惑する壮太だったが、自分の気持ちについて考え、その気持ちを正直に伝え、やっとのことで付き合うこととなった二人。
晴れて、幼なじみから恋人へと関係を深めていく。
しかし、幸せな日々が続いていくと思われた最中、二人の前に忘れ去ったはずの過去が立ちふさがる。
急速に崩れ去っていく日常に、二人はどう立ち向かっていくのか!?
そして由比子が忘れ去った過去とは――?
▲ミホ叔母さんと、由比子と双葉と、いつもと変わらぬ冬休みを過ごす壮太。しかし、由比子との関係は幼なじみから恋人へと変化していく
▲知らない間に女らしい部分が増えてきた由比子に、壮太は戸惑いながらも自分の気持ちに気付いていく
▲いつも一緒に遊んでいた壮太と由比子と五郎。しかし、由比子が記憶の奥底に封印した8年前の忌まわしい記憶が徐々に顔を覗かせていく…
●沙々羅の章-世間知らずの不思議な少女にまつわる大きな秘密…
壮太はみんなに誘われて、島で行われる祭りに参加することになる。
その祭りの夜店で、店主と揉めている少女に出会い、不思議な少女、沙々羅との関係が始まっていく。
身体が弱いのか、ろくに外に出たこともないらしく、とても世間知らずな沙々羅。
そんな少女との交流を深めていく中で、不思議と壮太は沙々羅に惹かれていった。
だが、そんな沙々羅との日々も長くは続かなず、壮太が沙々羅に会いに行っても、彼女の父親が会うことを拒む。
元々身体が弱い沙々羅は、このところ体調を崩しているのだと説明される。
取り付くしまもない父親の態度に困窮する壮太だが、その後、ある女性と出会うこととなる。
女性との出会いがもたらす真実とは? そして壮太が知ることになる沙々羅の運命とは?
▲祭の夜店で出会った不思議な少女、沙々羅。お金を払うこともしらない世間知らずな少女は、子供の頃にどこかで会ったような…
▲世間知らずで不思議だけど純真な沙々羅に惹かれていく壮太。沙々羅も初めての友達、壮太に惹かれていく。しかし、沙々羅の父親、七条克己は、壮太が沙々羅に会うことを拒む
●シリアスなだけでなくコミカルに、そしてエッチに進むストーリー
3つの不思議なストーリーは互いに関連性を覗かせながら、島全体を巻き込むある秘密に連なっていく。
それぞれのストーリーは濃厚で、驚くような展開を迎えながら時にシリアスに、時にコミカルに進んでいく。
もちろんヒロインたちとのエッチシーンもふんだんに盛り込まれているから安心して欲しい。
▲日常的なシーンでは、デフォルメキャラによるコミカルな演出が盛り込まれている
▲絶対的に不利な状況を逆転させる裁判みたいな、ネタに走ったシチュエーションも大いに笑えるぞ!
▲いくら気持ちが近づいても、記憶を三日しか維持できない茅羽耶は、4日後には全てを忘れ去ってしまう。怪我した彼女を背負って歩いたことも、より深い関係になれたことも全て…
▲幼なじみから恋人になった由比子とは順調な恋人関係が続くかと思われたが、8年前のある事件が彼女の心に暗い影を落とす
▲世間知らずで純真無垢な沙々羅には、本人にも知らされていない何か重大な秘密が隠されているらしい。その秘密を知ったとき、少年と少女は決断を迫られることになる
●シナリオそのもの、ストーリーを存分に楽しめる作品
本作の特徴はなんといっても、3人のメインヒロインのシナリオそのものだ。
シンプルな恋愛モノをイメージしていたものだから、劇的に変化を遂げていくシナリオに驚きを隠せなかった。
本作をプレイする際にはぜひ、何の先入観もなく気軽にプレイし、シナリオの意外性を味わって欲しいぞ!
夏空カナタ |
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ブランド | ゆずソフト |
発売日 | 2008年5月23日 |
ジャンル | アドベンチャー |
原画 | こぶいち&むりりん |
シナリオ | 天宮リツ・玉沢円 |
BGM制作 | Famishin |
ボーカル曲制作 | Angel Note |
歌手 | 霜月はるか/榊原ゆい |
価格 | 9,240円 |
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